耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
良好だった榮達との関係が崩れ始めたのは、それから約五年後。清香の妊娠が分かった時———


『だから気をつけろと!———あれほどっ!!』

榮達の第一声はそれだった。
清香の二人目の妊娠を聞いた時、榮達は出産に大反対した。

声を荒げた父に、清香は涼しい顔で『あら、二人目の方がお産は楽なのよ、お父さま』と返す。

正直、総一郎にも不安はあった。妻の体が二回目の出産に耐えきれるのかどうか。
妻の体のことを考えたら二人目は諦めるべきかもしれない。

けれど、『どうしても、もう一人あなたとの子どもが欲しいの』と清香に何度も何度も言われ、総一郎が折れることになる。

ただでさえ普段から妻に甘いのに、何度も潤んだ瞳で見上げられながら必死に訴えられたら、強く反対することが出来なくなる。

自分だって妻との子どもは欲しい。「あと三人」は無理でも、「あと一人」くらいなら大丈夫じゃないだろうか。妻もああ言っていることだし———。

そう思ってしまい、心配はあったが二人目を持つことに決めた。
決して無理はしない、という約束で。

清香の切望を叶える形になったものの、間違いなく総一郎も望んだ妊娠。
けれどそれが、義父榮達の怒りを買ってしまったのだ。

義父の怒りは一人娘への愛情から来るもの。それを分かっていた清香は、『今は放っておきましょう。二人目が生まれたらきっと孫可愛さにお父さまの怒りもとけるから』と言って、少し実家との距離を空けるようになった。

結果として、榮達はこのあと生まれた孫娘のことを溺愛するようになるのだが、それはこの時点ではまだ先の話。


清香の妊娠中、榮達は第一線から引退するのを機に、都内の自宅は長男に譲り、自分は避暑地の別荘に住まいを移すことにした。彼の妻は早くに亡くなっていたので、榮達本人と数名の従業員を連れての引っ越しだった。


ほどなくして二人目を出産した清香。里帰りをせずに都内の大きな総合病院での出産だった。
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