耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
(怜ちゃんが言ってた『聞いて欲しいこと』って………)

『じっくり話をしたいから』と、仕切り直しをすることになった。だから温かい飲物を持って、いつもの場所に腰を落ち着けた。
けれどまだ、怜が話し始める気配はない。
美寧は、隣に座る怜の気配を気にしながら、黙ってカフェオレを飲み続けた。

従業員価格(・・・・・)で買った【ラプワール・オリジナルブレンド】は、いつもと変わらず美味しい。
いやなえぐみ(・・・)が一切ない、コーヒー特有の苦みと香り。そのどちらも、たっぷり入れたミルクに決して負けていない。

一番初めに飲んだ時と同じその味は、マスターの人柄そのもの。
優しくて深い味わいのカフェオレに、美寧の緊張が少しだけほぐれた。

怜は美寧に『聞いて欲しいことがある』と言っていた。そして、美寧もまた、怜に言わなければならないことがある。
それを黙ったまま、このまま彼のそばにいつづけることなんて出来ない。
どんなに怒られても責められても、きちんとそのことを話さなければ―———。

ローテーブルに置いたカップの中で、乳褐色の液体がわずかに揺れた。

両手を膝の上にそろえ、体を斜めにずらし、怜の方に向ける。顔はまだ上げらない。怜の顔を直視するのが少し怖い。

だとしても、今の自分には彼に言わなければならないことがある。

「昨日はごめ、」
「ゆうべは大きな声を出してしまって、すみませんでした」

重なった声に、反射的に顔を上げた。
切れ長の瞳が、まっすぐに美寧を見つめている。

「……れいちゃんが謝ることなんてなにも、」

「ミネ———聞いてください」

たしなめるように名前を呼ばれ、開いていた口を閉じる。
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