耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
『聞いてください』と怜は言った。
きっとこれから彼が言うことがミネに『聞いて欲しいこと』なのだ。
それなら自分はちゃんと聞こう。いや、ちゃんと聞きたい。
どんな小さなことでも、彼が望むことなら叶えたいから。
美寧は膝の上で重ねた両手をぎゅっと握って、怜に向かって頷く。少しだけ目元をゆるめた怜が、「ありがとうございます」と微笑んだ。
「俺は、父と母が建てたこの家で生まれ育ちました」
唐突に始まった『生い立ち話』。
それが今回のことと何か関係があるのだろうか。
美寧は疑問に思ったけれど、黙って怜の話に耳を傾ける。なんとなく、さえぎってはいけない気がしていた。
「父は地質学の研究者で、一年の半分以上を国内外への調査に費やしていました。ですので、父はあまり家にはいませんでしたが、帰ってくる時はカバンに入りきれないくらいのお土産と、現地であったことの話を俺や母に聞かせてくれて。仕事が趣味、と言ってもいいような父だったので、出張自体は楽しそうだったのですが、帰ってくるたびにいつも言うことがあったのです」
「いつも言うこと………?」
「はい。———『志織(しおり)の作ったご飯が早く食べたかった』と。父は母の作る料理がとても好きでしたから」
「お料理がお上手なお母さまだったんだよね?」
美寧の言葉に怜が微笑みながら頷く。
きっとこれから彼が言うことがミネに『聞いて欲しいこと』なのだ。
それなら自分はちゃんと聞こう。いや、ちゃんと聞きたい。
どんな小さなことでも、彼が望むことなら叶えたいから。
美寧は膝の上で重ねた両手をぎゅっと握って、怜に向かって頷く。少しだけ目元をゆるめた怜が、「ありがとうございます」と微笑んだ。
「俺は、父と母が建てたこの家で生まれ育ちました」
唐突に始まった『生い立ち話』。
それが今回のことと何か関係があるのだろうか。
美寧は疑問に思ったけれど、黙って怜の話に耳を傾ける。なんとなく、さえぎってはいけない気がしていた。
「父は地質学の研究者で、一年の半分以上を国内外への調査に費やしていました。ですので、父はあまり家にはいませんでしたが、帰ってくる時はカバンに入りきれないくらいのお土産と、現地であったことの話を俺や母に聞かせてくれて。仕事が趣味、と言ってもいいような父だったので、出張自体は楽しそうだったのですが、帰ってくるたびにいつも言うことがあったのです」
「いつも言うこと………?」
「はい。———『志織(しおり)の作ったご飯が早く食べたかった』と。父は母の作る料理がとても好きでしたから」
「お料理がお上手なお母さまだったんだよね?」
美寧の言葉に怜が微笑みながら頷く。