耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「っ!」

美寧は唐突に悟った。自分がしたことの罪深さを。

『大事な人が突然いなくなる』

彼にとっては一番つらいことを、一番してはいけないことを、自分はしたのだ。
乾ききらない彼の傷あとに、無神経に爪を立てるようなまねをした———。

美寧は、怜を見上げたまま微動だに出来なくなった。その瞳からは大量の涙があふれ出す。

自分が泣くなんて怜に失礼だ。
泣いてもなんの解決にもならないのに。

分かっているから止めようと思うのに、次々とあふれ出す涙は、止まるどころか勢いを増していく。

『ごめんなさい』

そんな簡単な言葉で済まされるようなことではない。それで済むと思っていたなんて、あまりに浅はかで、自分が腹立たしい。

どうやって自分のしたことを彼に謝ればいいのか。
泣いている場合じゃない。なのに、涙を止めることすら出来ない。

(なんでそんなことすら出来ないの———!)

はがゆさのあまり、きつく唇を噛む。

すると怜は、少し困ったように眉をさげた。そして美寧を抱きしめる腕を解き、その手で美寧の頬をふわりと包み込んだ。

「泣かないで———言ったでしょう?俺はあなたの涙に弱いって」

「う、ううっ……ごっ、ごめっ………」

「謝る必要もないと言いましたよね?」

「うぇっく……うううっ……」

大きく(かぶり)をふる。
必要がないとかあるとかじゃない。自分は怜に謝らなければならない。

美寧は痛いくらいに唇を噛むと、嗚咽をゴクンと飲み込む。そして次の嗚咽よりも早く、声を振り絞った。

「ごめんなさいっ、———」

「ミネ………」

「あやまって…済むなんて、思ってない……でもっ———、ほかにどうしたらいいのか分からないのっ……ごめんな……さい」
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