耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
語尾が涙で震えた。
ぼろぼろと止まることなくあふれ出る涙が、怜の手の上をすべり落ちていく。
怜は両手で美寧の頬を包んだまま、親指で彼女の目元を拭い、そして、そこにくちづけを落とした。

「あなたが謝ることはなにもない」

美寧が大きく(かぶり)をふると、怜は「俺の子猫はやっぱり頑固だな」と言って、「くくっ」と小さく笑った。

「俺が今話したのは『俺の弱さ』です。それはあなたの責任ではない。黙っていなくなったことを心配はしましたが、それはゆうべちゃんと謝ってくれたでしょう?」

振っていた頭を止め、目を丸くする美寧。
すると、怜は「ゆうべ、あの夜の庭で。———ちゃんと伝わりましたよ」と言った。

あんなに泣きじゃくって、声というよりも慟哭や咆哮と言った方が正しい美寧の言葉を、怜はちゃんと分かったと言う。

いや、分かったのは『言葉』ではなく『気持ち』なのだろう。
美寧が怜に伝えたい『謝罪(こと)』を、怜はちゃんとすくい上げてくれていたのだ。

「俺があなたに聞いて欲しかったのは、俺の『弱さとずるさ』です。俺は……本当はこんなに情けない人間なのです。『あなたのことを守る』と言っておきながら、自分を守ろうとした。それであなたに不安を(いだ)かせた。だから、俺の方こそ謝らないといけない」

頬を包まれたまま、美寧は小さく首をふる。口を開けばまた嗚咽が漏れるから、きつく唇を噛んだまま。

「あなたを失うことを怖れるあまり、いつ手放してもいいように心構えをしていました。だから、家族のところに帰るように勧めた。それは臆病な俺の保身。そのせいであなたを悲しませてしまった。……本当にすみませんでした」

「っ、」

「あなたがいなくなった時、俺はやっと気が付いたんだ。あなたを、美寧を絶対に手放すことなどできないと。———だから、あなたが謝ることはなにもない」

美寧は大きく瞳を見開いた。その拍子に、大粒の涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
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