耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー

息をのみ、瞬きをするのも忘れて手の中の小さな花に見入る。

「聞きました。聡臣(あきおみ)さんに………あなたが知らない男に襲われかけたこと」

「あ、………」

そうか、と納得する。兄が怜に昨日の事件を教えたのか———

「聡臣さんの車から飛び出した後、俺のところに来てくれたのでしょう?」

「ど、どうして………」

「これが教えてくれたのです」

そう言って怜は、美寧の手のひらからネックレスを持ち上げると、美寧の首の後ろにそっと腕を回し、金具を止めた。

准教授室(おれのへや)の前に落ちていました」

美寧の手がゆっくりと首元に移動する。指先に触れるデコボコとした花びらの感触に、(こら)え切れず涙がこぼれ落ちる。

ふわりと背中に手が回り、怜の声が耳元で囁いた。

「怖い思いをしたあなたが俺を頼って来たのに……、あのとき抱きしめてあげられず、すみませんでした………」

美寧はネックレスを握って、小さく左右に首をふる。が、怜の次の言葉にその動きを止めた。

「神谷君も―――」

「え………」

「神谷君にも聞きました。自分がしたことをあなたに謝りたいと言ってきて———」

美寧はぎゅっと固く目を閉じ、大きく(かぶり)をふった。今は彼の顔を見るのも怖い。

「………謝られたからといって、無理に許す必要もありません。会いたくないなら会わなくていい。彼はそれくらいのことをあなたにしたのだから」

めずらしく怜から怒りの気配が伝わってくる。

「あなたは何も悪くない。だから『約束をやぶった』と自分を責める必要も謝る必要もない。自分勝手にされたキスなんてキスじゃない。ただの厄災です。犬に噛まれたと思って忘れなさい」

そう言われてもなかなかすぐに「はい」とは言えない。「忘れろ」と言われて忘れられるならどんなにいいだろう———

頭を縦にも横にもふることが出来ず黙ったまま固まっていると、耳のすぐそばで低く唸るような声がした。

「いや、———忘れさせる」

(え、!?)

そう思った瞬間、あごに手をかけられ、うつむいていた顔を持ち上げられる。
目が合うよりも早く、唇を塞がれた。

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