耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「いやだよっ、壁なんてやだっ!」

すがるように目の前の体にしがみつく。
小さなこどもが「いやいや」をするように首を左右にふりながら、美寧は言った。

「そんなのいらない!作っちゃやだ!」

まるで“こどものわがまま”みたいだと、頭の片隅で思いながらも、美寧の言葉は止まらない。

縋りつくように怜の両腕を握る美寧を、苦しそうに眉を寄せた怜が見降ろす。

「怖くないのですか………」

「怖い……?」

「俺のことが」

「れいちゃんが?……そんなこと、」

怜の何が怖いというのだろう。何も怖くなどない。それどころか、幸せでほっと安心するというのに。

「俺は怖い———」

何が怖いのだろう。美寧がそう思ってすぐ。

「貴女を抱くことが———一度抱いてしまえば、もう絶対に手放せなくなる。あなたがもし俺の元からいなくなったら、俺はこれまでの俺ではいられなくなる。そんな自分が怖いのです」

「だから聡臣さんが現れてから、あなたに触れるのが怖くなった。」

「触れればあなたが欲しくなる。いずれ手放す時が来るかもしれない、と思えば思うほど、自分勝手な俺はあなたを求めてしまう。自分で自分が怖かった。あなたの意思など無視して、ここに閉じ込めたくて堪らなくなる、そんな自分が———」

ほとんど独白と言える怜の感情の吐露。
茫然としている美寧を見た怜の瞳がせつなげに揺れた。

「ミネ、あなたはまだ若い。それに、今度こそ家族揃って暮らせる幸せを、俺が邪魔するわけにはいきません。いっそあなたの口から『家に帰る』と訊けば納得できるかと考えもしました」

「………だかられいちゃんは、私に家に帰るように言ったの……?」

「あなたにとってその方が良いかと思いました」

早くに家族を亡くしている怜だからこそ、美寧が家族と暮らすことを大事に考えていくれたのだと分かる。

それは分かる。分かるけど———
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