耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[2]***


怜に抱えられ、廊下を進む。
その間も、怜は少しの時間を惜しむように、何度も美寧にくちづけを落とす。頬に、額に、瞼に、鼻先に———

廊下の一番つきあたりにある部屋の前で、怜が足を止める。ドアノブに手をかけた。シンとした冷えた廊下に、カチャリとドアが開く音が響く。
部屋に入ると、怜はもう一度美寧の額にくちづけを落とし、そっとドアを閉めた。

家中がひっそりと静まりかえる。
聞こえたのは、怜が美寧を下ろしたベッドの立てた音だけ。ほかに、二人の間に割って入るものはない。

ベッドの上に横たえられた瞬間、真っ白なシーツに、ふわりと栗色の髪が広がった。


ついさっきまで何度もくり返された激しいくちづけで、今も全然体に力が入らない。窓から差し込む西日が、ゆらゆらと天井でたゆたう。いつか見た水族館のクラゲは、こんな気持ちなのだろうか。

とろん(・・・)と脱力した瞳で怜を見あげる美寧の唇に、静かなくちづけが落とされた。

ゆっくりと怜の唇が離れていく。それがなぜか妙に寂しい。
離れていく怜の唇を目で追っていると、ふっと息だけで笑った唇が、今度は美寧の瞼で音を立てた。

幾度も美寧の顔にキスを降らせた唇が、ゆっくりと降りていく。
首を軽く吸って音を立てながら降りていき、鎖骨の上に這う舌に、美寧の口から「あっ、」と小さな声が漏れる。

慌てて口を引き結んだ。声を漏らすまいと唇を噛んだ。けれど———

「噛まないで———」

怜の親指が、美寧の唇の(あわい)に差し込まれる。

「何も我慢しないで。どんなものも、あなたのものならひとつも聞き逃したくない。嫌なら嫌と、怖いなら怖いと、全部教えて———」

そう言った怜の、瞳の奥が揺らいでいる。
美寧は両手を伸ばし、怜の頭を自分の胸に引き寄せた。

「怖くないよ………怖くない」

そして、彼がいつも自分にしてくれるように、その頭をそっと撫でた。指の間をくすぐるサラサラとした感触が心地好くて、何度も同じ場所を往復させる。

「れいちゃんじゃない男の人だったら、きっとすごく怖い……。でも、れいちゃんは全然怖くない。大丈夫なの」

自分でもよく分からない。だけどそれが『好き』ということなのかもしれない。
美寧は怜の髪に滑らせていた手を止め、そのてっぺんにくちづけ、そして言った。

「だから、れいちゃん。———そんなに怖がらなくていいんだよ」

怜の体が小さく震えた。そして次の瞬間、美寧はきつく抱きしめられた。

「愛してる———俺の子猫(ma minette)

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