耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
結局色々な料理を少しずつ摘まんでいるうちに、思ったよりも食べ過ぎてしまったようで、朝起きても美寧のお腹はまったく空いていなかった。兄の持ってきたケーキを食べてしまったせいかもしれない。いつもの半分以下に控えたはずなのに。

飲みなれないシャンパンを飲んでしまったのも、一因だろう。兄が持ってきたシャンパンは、口当たりが良く、とても飲みやすかった。
けれど、どんなに飲みやすくてもワインはワイン。食事の合間にちびちびと飲み、グラス半分にも満たない量で酔いが回ってしまった。いつのまにか眠ってしまい、気付いたら今朝(あさ)だった。兄がいつ帰ったのかも知らない。


「お昼、あまり入らないかも………」

「でも、朝もほとんど食べなかったでしょう………?」

怜が顔をのぞき込んでくる。じっとうかがうような瞳は、美寧の体調を心配するもので———

「あ、大丈夫だよ?体調が悪いとかじゃないの。昨日食べ過ぎたし、お酒も飲んじゃったし………今日の夜はちゃんと食べれるようにしておきたいだけなの、ほんとだよ?」

一生懸命そう言い募る美寧に、怜の瞳が和らぐ。そして「分かりました」と言って顔をもとの位置に戻した。

(れいちゃん、やっぱりまだ心配してる……?体調が戻ってから、もうだいぶん経つのに………)

美寧はチラリと横目に怜を見る。その横顔はいつもと変わらない。

“あの日”———美寧が初めて怜に抱かれた日。
美寧は夜中に熱を出した。

予兆はあったのだ。
けれど、痛む喉は泣きすぎたせい、ぼんやりしてしまうのは寝不足のせい。そう思っていた。
初めて知る自分の周りの人たちの事情や気持ちのことばかりを考えて、自分の体調の変化が二の次になったこともある。
< 359 / 427 >

この作品をシェア

pagetop