耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
翌日、美寧が熱を出したと怜からの連絡を受けた涼香が、家族の予定があるにも関わらず往診に来てくれた。

久住医師による見立ては、『冷えと過労と精神的なものによる発熱』。
どれも心当たりがあった。

立て続けに起こったショックな事件、長距離移動、そして、極めつけに薄着で雪の降る庭に出たこと。
事件のこと以外は美寧が自らやったことで、怜には何の責任もない。

それなのに怜は、『あなたの体調が悪いことに気付かず、とんでもない無理をさせてしましました………』と反省しきりで、美寧が熱を出して寝込んでいる間中、大学にも必要最低限しか出勤せず、ずっとそばで看病してくれた。

熱で顔を赤くしながら、『私のことはいいから、お仕事に行って?』という美寧に、怜は、『ここのところ働き過ぎたので、その分の休みです』と言う。すでに今週の講義は休講にした後だ、とも。

発熱したと気付いたのが、怜の部屋のベッドで、そのままそこで寝かされて看病され、体調が戻った後もなぜか、そのままそこで寝ている。

それなのに———

(毎日一緒に寝てるのに、あれからなにも(・・・)ない………)

熱が引いて、段々と元気になってくると、そのことがどうしても気になりはじめた。
最初は、『自分が“病み上がり”だからだろう』と思い、次は『私のせいで大学を休んでいたから、今はお仕事が忙しいのかも』と思った。けれど段々と『もしかして、なにか失敗しちゃったのかも……』と不安になってしまう。

怜は変わらず優しいし、“特別なキス”もする。抱きしめられて一緒に眠って、そして腕の中で目覚める。
それは得も言われぬほど幸せで、それを知ってしまった今、「自分の布団で、一人で寝てください」と言われたら、寂しさのあまり泣いてしまうかもしれない。

(もしかして、あれ(・・)は、恋人になった時の一回しかしないものなのかな…………)

脳裏にそのとき(・・・・)の彼の姿が鮮やかに映し出される。
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