耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
部屋の奥のコーナーに置かれたL字型デスク。怜が座っているデスクチェアは、グレーのファブリック生地に覆われて、アームから座面にかけての一体成型された少し変わったデザイン。

“仕事部屋”然としているのに、全体の雰囲気がスタイリッシュにまとめられていて怜らしい。
壁面に置かれた天井近くまである大きな本棚を見ながら、美寧はあることに気が付いた。

(ここ———れいちゃんの大学のお部屋と似てるんだ……)

部屋の間取りや家具の配置も全然違うのに、なんとなく”怜の場所”という感じが二つの部屋に共通していた。

(だから変に安心出来て、眠っちゃったのかな……)

あの日、美寧が怜の大学に足を運んだ時。美寧は怜の准教授室でいつのまにか眠ってしまっていた。


ゆっくりと目覚めた美寧の瞳に映ったのは、真下から見る怜の顔。手に持った何かの書類をシルバーリムの奥の瞳が追っている。頭の下には彼の膝。自分はどうやら怜の膝の上で寝ているようだ。
美寧は寝起きの頭で、てっきり家のソファーで寝ていたのだと思った。

『そろそろ帰りましょうか』

『え、帰るって……』

怜は美寧に『もう実家に帰れ』と言っているのだろうか———
そんな考えが頭に過った。

ふにゃりと歪められた美寧の表情に気が付いたのか、怜は手に持っていた書類をソファーに置き、美寧の頭を撫でながら言った。

『一緒に我が家に帰りましょう。夕飯はオムライスでいいですか?』

その時やっと、自分がどこにいるのか思い出した。
そして既に太陽が西に傾き始めている時間なのだということにも驚いた。


< 36 / 427 >

この作品をシェア

pagetop