耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「私はもう元気なの。玉子雑炊を食べて、はちみつカリン湯を飲んで、プリンとかあんずシャーベットとか食べて、———みんなね、れいちゃんが作ってくれたものなんだよ?」

杏奈が持って来てくれた“あんずのシロップ漬け”を使ったシャーベットも、花江がくれたカリンで作った“はちみつカリン”も、どちらも怜の手作り。

「れいちゃんのお料理を食べて、たくさん眠って………だからもう今はすごく元気。前よりも元気なくらいなの。それに、熱が出たのは、れいちゃんのせいじゃない」

前のめりなくらいに力説する美寧のことを、怜は少し困った顔で見つめている。

「だから、あんまり心配しないで……私、大丈夫だから。ね?」

下から覗き込むようにしてそう念を押すと、それまで黙っていた怜が口を開いた。

「俺は……あなたのお父さまの気持ちが痛いほどよく分かる………」

「え、?」

怜の言葉に美寧は動きを止める。今、父の話が出てくるとは思わなかった。
目を(しばた)かせている美寧を、怜は抱き寄せた。

「あなたのお母さまが体調を崩された時のお父さまの気持ちが……心配で仕方ない気持ちも、失いたくないと怯える気持ちも、手に取るように分かります………だから俺は、あなたのお父さまの話を聞きながら、まるで自分のことのようだと思っていた。いや、きっと俺は、もしあなたに何かあったら、彼のように仕事に没頭することも出来ないだろうな………」

「れいちゃん………」

「すみません。また俺が情けないせいで、またあなたにいらない心配をかけてしまいましたね………」

怜が眉を下げて口の端を少し上げる。それは少し、失敗した笑顔みたいで。

美寧は堪らず、怜の腰に腕を回してぎゅっと抱きついた。
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