耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「わたしっ、もっといっぱい食べる。たくさん食べて、たくさん動いて、ちょっとやそっとじゃビクともしない元気な体になる!」

「ミネ………」

「れいちゃんのご飯なら、きっとそうなれるもん……だから大丈夫」

怜の腰に抱き着いたまま、怜を見上げて「ね?」と小首を傾げた美寧に、怜は一瞬目を見張った後、ゆっくりと顔を大きくほころばせた。

滅多に見ることのない怜の破顔に、美寧は呼吸を忘れ見惚れる。
すると怜が突然、美寧の脇の下に両手を差し込み、ひょいっと軽く美寧を持ち上げた。

「わっ、」

抱きかかえたままスタスタとキッチンを出ていこうとする。

「え、え、どうしたの、れいちゃん!?どこに行くの?」

慌てた美寧が訊くと、怜が足を止める。そして言った。

「『大丈夫』だと言いましたよね?」

「う、うん………」

確かに言った。『もうすっかり元気だ』という意味で。

「せっかくあなたがそう言ってくれているので、これからそれを確かめようと思います」

「え、え、え、」

「ちなみに、『あの一回』だけではありません」

「にゃっ、」

「これから『何回でも』二人で回数を重ねていきましょうね」

「~~~~っ、」

声にならない叫び声をあげた美寧を、怜は抱えたまま再び足を動かし始める。
キッチンの扉を開けて廊下に出る。この廊下の突き当り、クランクになっている正面は怜の部屋で―――

「あのっ、ちょっとまって、……れいちゃんっ!」

「はい」と返事をしながらもその長い足は止まらない。あと二歩半で部屋の前、というところで、美寧は叫んだ。

「今はだめ~~~っ!ケーキが焦げちゃうっ!!」
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