耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
涙目で「せっかくのお誕生日ケーキなのに、焦げちゃってたらやだよっ」と叫んだ美寧。オーブンの中ではまだスポンジが焼かれている途中なのだ。

眉を寄せ潤んだ瞳でじっとりと見上げていると、怜が「ふはっ」と噴き出した。

「そうですね。あなたが頑張って作ってくれたスポンジを焦がすわけにはいきませんね」

その言葉に美寧はホッと息をつく。美寧の眉間がゆるむのと同時に、怜が言った。

「デザートは、ケーキを食べたあとの楽しみに取っておきます」

「デザート……?ケーキがデザートじゃないの?」

更にまだ何かあるのか、と美寧は首をひねった。そんなに食べられるかな、と不安が過った時———

「俺にとっての“とっておきのデザート”は、いつでもあなたですよ、ミネ」

「なっ、」

「しかも、今夜は“特別な夜”———ですよね?」

「う、うん……れいちゃんのお誕生日だもんね」

今日は怜の誕生日なのだ。本人の希望は出来るだけ叶えたい。
赤い顔のまま頷いた美寧に、怜が「俺の誕生日は別にいいのです」と言う。

「お誕生日はいいの?」

「はい」

「えっと、じゃあ………」

いったい何が“特別”なのだろう———。

「俺の誕生日なんて、これから何回でも来ますが、“今日の夜”は一度きりです」

「今日の夜………」

『一度きり』とはなんだろう、と美寧が考え込んでいると、耳元に怜が口を寄せた。

「………、です」

「しょっ、……~~~っ!」

みるみる顔を赤くしていく美寧を見て、怜は楽しげに声を上げて笑った。



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