耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「……また、………ると困りますから」

小さく呟いた怜の声が聞き取りづらく、美寧は「え、なに?」と訊き返す。すると、今度はハッキリと聞こえる声で言った。

「また、勘違いしてあなたに近づく男が現れると困ります」

「なっ、そ、そんな———」

『ことはない』と言おうとして、言葉に詰まった。『そんなこと』はあったばかりだ。

「神谷君が———」

その名前に美寧の肩が小さく跳ねる。

「俺があなたのことを(もてあそ)んでいると、ずっと勘違いしていたようです」

「もてっ、……そんなことっ、」

「いや、実際本人から『彼女を弄ぶな』と言われました」

「っ、」

「あなたと俺が恋人同士だということも、ずいぶん知らなかったようですし」

「そ、それは………」

少し恨めしそうな視線を送られ、「ごめんなさい」と謝る。
最初の頃に、自分と怜とは恋人同士で、一緒に暮らしてるのだと言っておけば、彼もあんなふうに思いつめたりしなかったのかもしれない。

シュンと肩を下げた美寧の頭で、怜の左手がぽん、と跳ねるように撫でる。

「あの件に関して、あなたが悪いわけではありません。ですが、そうじゃなくても油断できません。これからあなたはきっと、老若男女問わず色々な人を魅了するでしょう」

「そ、そんなことないと思うけど………」

「いいえ」

怜がきっぱりと言い切った。
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