耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「大学で何かありましたか?」

率直に訊かれて、美寧は答えを返せない。それは「是」と答えたのに等しい。

「ミネ」

優しく名前を呼ばれる。怜の口から出る自分の名前は、他の人が呼ぶのとは違う。とても素敵なものに聞こえる。

椅子に座ったままの怜にそっと手を取られ、美寧は躊躇(とまど)いながらも口を開いた。

「れいちゃんは……私で、いいの?」

怜の目を見ることが出来ず、つい視線が泳いでしまう。
美寧は自分に自信がない。

「大学にはおしゃれな子もきれいな人もいっぱい居たし……れいちゃん、すごく人気だって、神谷さんも言ってたし…………」

怜がピクリとかすかに動くのが、繋がれた手から伝わった。

俯いて口を閉じた美寧。部屋に沈黙が落ちる。怜との間に重たい空気が横たわる。
繋がれた手の温もりだけが、二人を繋ぐもののように感じた。

(もしかして私、また変なこと言っちゃったのかも……)

沈黙に不安を感じた美寧がそう思った時、怜が重い息を吐き出した。

溜息の音に美寧の肩がピクリと跳ねる。同時に、繋いだ手をグッと引かれ、美寧の体が前のめりに傾いた。
次の瞬間、美寧の体は怜の方へ倒れ込み、それを受け止めた怜はなぜか美寧をそのまま抱え上げながら立ち上がった。

「きゃっ、」

驚いた声を上げたその三秒後、美寧の体はすぐ傍のベッドへと沈められていた。


「あなたはもう少しちゃんと自覚したほうがいい」

低く掠れた声が上から降ってくる。
美寧を見下ろす瞳が、濡れたように光っている。

「れい、」

「どれくらい俺があなたのことを想っているか———それとも、言葉だけじゃ足りませんか?」

(それって、どういう……)

美寧がその疑問を口にするよりも、怜がその口を塞ぐ方が早かった。
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