耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
口の中に濃いコーヒーの味が入ってくる。

怜に出したコーヒーは、ラプワールのマスターが格安で分けてくれた豆で淹れた。怜の好みに合ったダークロースト(深煎り)は、店の焙煎機でマスターが炒ったもので、香りがとても良い。ついさっき味見をしたばかりの美寧は、それをよく知っている。

「ふっ、んんぁっ………」

鼻から抜けるような声と共に、コーヒーの香りをより一層強く感じる。
いつも優しく美寧のことを気遣う怜にしては珍しく、強引に口づけられて早々と息が上がる。

「んん~っ!」

息苦しくなって怜の背中をドンドンと叩く。
口の中のどこもかしこもが、香ばしいコーヒー豆の香りでいっぱいになった頃、美寧の口はやっと自由になった。新鮮な酸素を求めて大きく息を吸い込むと、こほっと咽る。

息を整えながら起き上がろうと頭を浮かしかけた美寧の肩を、怜が片手で押した。再び美寧の頭がベッドに沈む。それと同時に、パクリと喰らい付くかのように怜が美寧の首元に唇を寄せた。

「やっ、」

ぞくりとした痺れに身を捩ると、怜の手が美寧の着ているカットソーの裾から忍び込んで来た。

「ひゃっ」

脇腹を撫でられ、びっくりした声が出た。
脇から差し込まれた手は、そのまま横腹を上になぞり、そのまま背中に回った。肩甲骨を辿り、背骨をゆっくりとなぞりながら下へと下がっていく。

こんなふうに服に隠れている素肌に触れられるのは初めてで、美寧の頭の中が真っ白になった。

心臓が飛び出しそうなほど大きく鳴っているから、怜の手にも伝わっているかもしれない。
一人でお風呂に入る年齢になってから、そんなところを誰かに触られたことはない。羞恥のあまり、瞳が潤み始める。

「れ…いちゃん……ま、待って……」

途切れ途切れになりながらも、ちゃんと聞こえる声で言ったのに、怜は美寧の服の中から手を抜き取ることも、唇を首から離すこともない。
美寧の方を見ようとしない彼に、じわりと瞳が熱くなる。

「れいちゃんっ!」

半分悲鳴のような声で呼ぶと、怜の動きがピタリと止まった。
ほっとした瞬間、美寧の瞳から大粒の雫がポロリと零れ落ちる。怜が目を見開き、ハッと息を吸い込んだ。

その時———

呼び鈴が来客を告げた。



< 39 / 427 >

この作品をシェア

pagetop