耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
美寧を乗せた車を運転しているのは、久住航(くずみ わたる)。
涼香の夫で健の父親だ。

ついさっき初めて会った涼香の夫は、今どきのキラキラしたイケメンなのに、どこか親しみやすい雰囲気を持っている。

怜や涼香よりも年は若く、長い首に小さな顔、ウェーブパーマのかかったダークアッシュの髪。
雑誌の中から抜け出したようなお洒落な男性が、健を抱きかかえて涼香の後から現れた時はとても驚いた。
すぐに涼香から『夫の航よ』と紹介され、美寧も挨拶をしたのだった。


久住一家は、先週末に保育園で行われた芋ほり遠足でとれたさつま芋のお裾分けを、持ってやってきたという。

ついでに美寧を軽く診察した涼香は、じっと美寧の顔を見つめた後、おもむろにその手を掴んで立ち上がった。そして、『美寧ちゃん借りるわよ!フジ君』と宣言して、嵐のように藤波家を後にした。

そしてそのまま、近くに止めてあった車に乗せられ、今に至る。


「でも、……家族でのお出掛けの邪魔をしちゃ、」

「大丈夫だよ?もともと藤波さんの家にお芋を持って行ったら、涼ちゃんとは別行動の予定だったんだ。俺と健は男同士、サッカーの練習をする約束だったんだよ。な?健」

「おところうしの やくそく。な!」

美寧の隣でチャイルドシートに大人しく座っていた健と航が、片手を上に突き上げて「おー」と言う。
息の合った掛け声に、美寧の緊張がすこし薄れた。

「だから、ゆっくり女子会しておいで?遠慮しないで、ね?」

再びルームミラー越しに目が合った航ににっこりと微笑まれて、今度は素直に「はい」と頷いた。

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