耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
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車で二十分ほど行った先の駅前で美寧と涼香を下ろした航は、『じゃあごゆっくり!』と言って去って行った。このまま郊外の緑地公園へ行くらしい。また二時間後に同じ場所まで迎えに来てくれることになっている。

(どこに行くんだろう……)

駅前のロータリーから歩き出した涼香に着いていきながら、美寧はついさっき車の中でした会話を思い返していた。


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「ごめんね、不躾な質問ばかりして……興味本位で無理やり聞き出したいわけじゃないの。女同士だし、私で何か力になれることがあればいいな、と思って……」

夫からやんわりと(たしな)められた涼香は、さっきとは打って変わって控えめにそう言った。

「いえ、あの……心配していただいたんですよね?ありがとうございます」

「ほんとに、なんでも言ってね?私に出来ることがあれば良いのだけど……」

「ありがとうございます。……じゃあ、一つだけ。訊いても良いですか?」

「なにっ!?」

美寧の言葉に涼香が勢いよく振り返った。
その勢いに少したじろいだものの、涼香の顔がひどく真剣で、美寧もつられて改まった。

「お化粧って、どうやったらいいんでしょうか………」

「お化粧?」

「はい」

「お化粧ね……美寧ちゃんは今のままでも十分可愛いわよ?」

「でも……私も大人になったからには、ちゃんとしたお化粧を覚えたくて。それと……」

「それと?」

「れいちゃんの大学の女の子たち……みんなおしゃれで素敵だったから……」

美寧の言葉に、涼香はすぐにピンときた。

「なるほど。フジ君の周りにいる子達が気になっちゃったんだ」

見えないと分かっているのに、涼香の真後ろで美寧は黙って頷いた。

「分かった!そういうことなら、涼香先生にまっかせなさい!」

振り向いた涼香が、美寧に向かって頷いた。


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