耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー

自分だけが彼女の「手作りチョコレート」を貰ったわけではない。
そのことを残念に思う自分に、ほとほと呆れる。

父親と兄にバレンタインを贈りたいというのは、当たり前の気持ち。
長い間拗れていた父親との関係を修復中の彼女にとって、こういうイベントは絶好の機会だ。その邪魔をするなどあり得ない。

そしてなにより、彼女との初めてのバレンタインに水を差したくなかった。

(あまり狭量なのは良くないな……)

きちんと話も聞かず勘違いした挙句、嫉妬して彼女に嫌な思いをさせてしまったことは記憶に新しい。
同じ(わだち)に足を取られるような愚行は犯さない。あの時、そう心に誓ったではないか。

(ラプワールのマスターは、ミネにとっては「もう一人の父親」だ)

そう自分に言い聞かせた怜は、さっきからじっと自分を見ている彼女へと顔を向けた。


「大好きな人に『美味しい』と言ってもらえるのは、とても嬉しいことですよね」

「うん……」

「俺は、あなたが嬉しそうにしているのを見るのが好きです」

「え、…う、うん……」

美寧は薄っすらと頬を染めながら「ありがとう」と続ける。

「だから、家族や友人とのバレンタインを楽しんでいるあなたを見るのは俺も嬉しい。ただ……」

「ただ?」

「ただ……俺だけの『特別』が欲しいと思ってしまうのは、やっぱり欲張りすぎでしょうか……」

美寧の瞳がみるみる見開かれていく。

それを見ながら、怜は少し情けなくなった。
こんなふうに些細なことで青臭い独占欲と嫉妬心を抱いてしまう。彼女よりも自分の方が十も年上なのに。

(これじゃまるで、母親を独占したくなる幼子(おさなご)と変わらないな……)

呆れる気持ちが一周回って可笑しくなる。
「ふっ」と苦く笑うと、突然隣からぎゅっと抱き着かれた。

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