耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[2]


くたりと寄りかかってきた美寧を支えるように抱きしめ、ゆっくりと背中を撫でる。彼女の息が整うの待ちながら、柔らかな髪に鼻をつけてピオニーのように清廉な香りを肺に送る。
さっきまで自分の中に(よど)んでいたなにかが、浄化されたようにスッキリとしていた。

ふと視線を感じて顔を向けると、潤んだ瞳がじっとこちらを見つめていた。

「……どうかしましたか?」

「ごきげん……なおった?」

「え?」

「れいちゃん……なんだかちょっとだけ怒ってたみたいだったから……」

怜はハッとなった。その表情に「やっぱり……」と肩を下げた美寧が、「私、なにか失敗しちゃったのかな……」と呟く。

「いえ、別に…そんなことは……」

「ない」と言いかけて言葉を濁した。正直、「まったく何もない」と言えば嘘になる。

けれど、美寧に「不機嫌」を気付かれている思わず、珍しく動揺したせいで口から上手い言葉が出てこない。考えているうちに美寧の顔がみるみる曇っていく。

怜の口からポロリと言葉が漏れた。

「正直少し妬きました」

「やき……あ!もしかして……他の人にバレンタインをあげるのはダメだった……?」

おそるおそる伺うように見上げてくる美寧に、怜は首を左右に振った。

「ダメじゃありません。『大切な家族』にチョコレートを贈りたいと思うのは当たり前の気持ちです。さっき言ったことは嘘じゃありません。嬉しそうなあなたを見ると、俺も嬉しい」

「……うん。でもじゃあ、何にヤキモチを……」

不思議そうに呟いた美寧に、怜は観念して口を開いた。

「あなたが俺以外の人と料理をしたことに少し妬けるな、と思ってしまいました」

「あっ……」

美寧はハッとした顔になったあと、俯いて黙り込んだ。

きっと今、彼女は「そんなことでヤキモチを焼くのか」とでも思っているのだろう。
それもそうだ。一緒に料理をした相手は女性。しかも自分も良く知る友人だ。

久住涼香(くずみ りょうか)は美寧にとって、主治医であり、友人でもあり、良き相談相手だ。今の彼女にとって無くてはならない大事な人。それは怜も十分に分かっている。
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