耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「ごめんなさい……れいちゃんの気持ちも考えなくて………。れいちゃんは私としかお菓子を作らないって約束してくれたのに、私だけなんて良くないよね……」
申し訳なさそうな顔で謝る美寧に、怜の方が申し訳なくなってくる。
つまらないことを言わなければ良かったと思う。折角彼女が自分を喜ばせようと頑張ってくれたのに。
うっかり余計なことを口にしたのは、美寧の指摘が意外と鋭くて動揺したせいだ。
「チョコレート。本当はれいちゃんと一緒に作りたかったの……だけど、こっそり作って渡した方がびっくりするかなって……でも……やっぱりひとりで作れば良かったね……」
「ミネ……」
悲しげに眉を下げ、潤んだ瞳を隠すように長い睫毛が伏せられる。
(そんな顔をさせたかったわけじゃない……)
怜の胸が痛んだ。自分が余計なことを言ったせいで、無駄に彼女を悲しませてしまった。
小さな体をさらに小さくして項垂れる美寧を、怜は堪らず抱きしめた。
「ミネ……今の言葉は気にしないで。あなたは『俺以外と料理をしない』と約束したわけではないでしょう?それに、俺にバレンタインのチョコレートを作りたいと思ってくれたことは、純粋に嬉しいですよ?」
「……そうかもしれないけど、でも……私ばっかり自由なんて……れいちゃんは私のこと甘やかしすぎだよ……」
「そんなことはありません。俺があなたを甘やかしたいんです。だから、もう気にしないで。ね?」
「でも……」
怜の台詞になかなか納得できないのか、美寧の顔はなかなか明るくならない。
膝の上に乗せた美寧を抱きしめながら、芍薬に似たほのかな香りを胸いっぱいに吸い込む。ゆっくりと息を吐きながら「すみません―――」と謝ると、小さな肩がピクリと跳ねた。
「本当につまらないヤキモチでした。あなたのことになると、俺はつい冷静さを失ってしまいます」
「………」
「『サプライズ』で相手を驚かせたい気持ちはよく分かります。現に俺もさっきあなたの驚いた顔を見れて嬉しかったですし」
自分が美寧にあげたバレンタインも『サプライズ』だった。そのことを棚に上げてはいけない。
「あなたには、友人との関係も大事にしてほしい。そうやって新しい世界を知って、広げて、楽しんで。自由に。そんなあなたのそばにいられるのが、俺はとても嬉しいんだ」
波打つ長い髪を撫でながら穏やかな口調でそう言うと、腕の中から美寧がおずおずと顔を持ち上げた。