耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
***
涼香に連れて来られたのは、駅直結の百貨店。一階の扉から入ったすぐ、いくつものコスメカウンターがずらりと並ぶ売り場の通路を迷いのない足取りで進んだ涼香は、一つのコスメカウンターの前までやってきた。
「ここ……」
「私がいつも愛用してるデパコスよ」
初めてのコスメカウンターに気後れをしている美寧に、涼香は「ちょうど今日はいつもの化粧品を買おうと思っていたのよ」と言ってカウンターへ一歩近づいた。
「すみません」
カウンター内の戸棚の前でしゃがんで中を見ている店員に、涼香が声をかけた。
こちらに気付いた店員が、「いらっしゃいませ」と言いながら振り返った。その拍子に、ハーフアップにしたゴールドブラウンの髪が背中で揺れる。
(うわっ、すっごくキレイな人!)
振り向いたその女性に、美寧は思わず見とれてしまった。
ぱっちりとした二重の瞳。くるんと上がった睫毛。白い肌にチェリーピンクのリップが映えて、とても華やかな印象だ。
顔立ちからすると自分とあまり変わらない年に見えるのに、目の前の彼女は可愛いのに『大人の女性』の雰囲気も併せ持っている。
髪の先から爪の先まで何もかも完璧に可愛くて、自分とは完全に別次元の存在。
まるで、昔祖父に買ってもらった着せ替え人形が、そのまま大きくなって目の前にいるみたいだ。
美寧は気付かないうちに感嘆の溜め息を漏らしていた。
「あら、あなた初めて見る方ね?佐々木さんはいらっしゃるかしら?」
ぼうっと見惚れている美寧の隣で、涼香がそう言った。
「申し訳ございません。佐々木は本日急遽お休みを頂いておりまして。わたくし神原が代理を務めさせていただいております」
「そうだったのね……取り置きをお願いしておいたのだけど……」
「恐れ入りますが、お客様のお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
「ええ。久住涼香、と言います」
「久住様ですね……少々お待ちくださいませ」
そう言うと彼女は、カウンター内の足元にある戸棚を開き、そこからいくつかの化粧品がまとめられた包みを出してきた。
「お待たせいたしました、久住様。こちらでお間違いございませんか?」
「ええ!完璧よ。ありがとう」
微笑んだ涼香に向かって浅くお辞儀をした店員の肩の横で、くるんと巻かれた毛先が揺れた。
「私の方はこれで完璧なのだけど、もう一つ。今日はこの子にメイクを教えて頂きたくて。いつもお世話になってる佐々木さんにお願いしようと思って連れてきたのだけど……」
「そうですか……それはご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ございませんでした。もしわたくしでもよろしければ、ご相談に乗らせて頂きますが……いかがでしょうか?」
「そうね……せっかく来たしお願いしようかしら。美寧ちゃん、どう?」
二人の会話を圧倒されながら聞いていた美寧は、「はい」と頷いた。
涼香に連れて来られたのは、駅直結の百貨店。一階の扉から入ったすぐ、いくつものコスメカウンターがずらりと並ぶ売り場の通路を迷いのない足取りで進んだ涼香は、一つのコスメカウンターの前までやってきた。
「ここ……」
「私がいつも愛用してるデパコスよ」
初めてのコスメカウンターに気後れをしている美寧に、涼香は「ちょうど今日はいつもの化粧品を買おうと思っていたのよ」と言ってカウンターへ一歩近づいた。
「すみません」
カウンター内の戸棚の前でしゃがんで中を見ている店員に、涼香が声をかけた。
こちらに気付いた店員が、「いらっしゃいませ」と言いながら振り返った。その拍子に、ハーフアップにしたゴールドブラウンの髪が背中で揺れる。
(うわっ、すっごくキレイな人!)
振り向いたその女性に、美寧は思わず見とれてしまった。
ぱっちりとした二重の瞳。くるんと上がった睫毛。白い肌にチェリーピンクのリップが映えて、とても華やかな印象だ。
顔立ちからすると自分とあまり変わらない年に見えるのに、目の前の彼女は可愛いのに『大人の女性』の雰囲気も併せ持っている。
髪の先から爪の先まで何もかも完璧に可愛くて、自分とは完全に別次元の存在。
まるで、昔祖父に買ってもらった着せ替え人形が、そのまま大きくなって目の前にいるみたいだ。
美寧は気付かないうちに感嘆の溜め息を漏らしていた。
「あら、あなた初めて見る方ね?佐々木さんはいらっしゃるかしら?」
ぼうっと見惚れている美寧の隣で、涼香がそう言った。
「申し訳ございません。佐々木は本日急遽お休みを頂いておりまして。わたくし神原が代理を務めさせていただいております」
「そうだったのね……取り置きをお願いしておいたのだけど……」
「恐れ入りますが、お客様のお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
「ええ。久住涼香、と言います」
「久住様ですね……少々お待ちくださいませ」
そう言うと彼女は、カウンター内の足元にある戸棚を開き、そこからいくつかの化粧品がまとめられた包みを出してきた。
「お待たせいたしました、久住様。こちらでお間違いございませんか?」
「ええ!完璧よ。ありがとう」
微笑んだ涼香に向かって浅くお辞儀をした店員の肩の横で、くるんと巻かれた毛先が揺れた。
「私の方はこれで完璧なのだけど、もう一つ。今日はこの子にメイクを教えて頂きたくて。いつもお世話になってる佐々木さんにお願いしようと思って連れてきたのだけど……」
「そうですか……それはご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ございませんでした。もしわたくしでもよろしければ、ご相談に乗らせて頂きますが……いかがでしょうか?」
「そうね……せっかく来たしお願いしようかしら。美寧ちゃん、どう?」
二人の会話を圧倒されながら聞いていた美寧は、「はい」と頷いた。