耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
『えっ!あ、……えっと、ごめん…………』

余計なことを言ってしまった、と焦る。
気まずい気持ちがそのまま顔に出ていたのだろう、それを見た怜がフッと笑った。

『別に大丈夫』

淡々とそう返ってきた。

もし自分だったら、航と別れたとしたらご飯も喉を通らないし、きっと毎晩泣き通しで目が腫れてひどい顔になっている。相手が同じ大学にいるとしたら、ここに来るのだって嫌になると思う。

そんな想像で胸を痛めながら、涼香は自分の失態を反省した。

『余計なこと聞いちゃって、………本当にごめんね』

『いいんだ。ユズキが気に病むようなことは何もない』

想像しただけで胸が痛くなるような出来事なのに、どうしてか目の前の彼はそんな風には見えない。
つい先日、彼に借りていた本を返し忘れた時とまるで何も変わらない。

涼香は妙な違和感を感じて、思わずじっと怜の顔を見た。
遠慮のない視線に怜が気付かないはずはないのに、彼は何事も無いかのように食事を続けながら淡々と言った。

『恋人との別れなんてよくあることだろ?大したことじゃない。………死に別れたわけじゃないんだし』

ポツリと呟くように落とされた最後の言葉に、涼香は目を見開いて黙ることしか出来なかった。


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