耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[2]


ラプワールで神谷と再会した翌日。
金曜日の今日は神谷の初出勤の日だった。

本来なら四時からバイトに入ることになっている神谷だが、“初出勤”だからと意気込み過ぎたのか、二時間も早く来た。

そのあまりの張り切り具合に、マスターから『まあ取り合えずコーヒーでも飲んで、少し落ち着いてから仕事に入れ』と言われ、カウンターに座らされ『仕事初めの記念の一杯』をご馳走になっていた。

そして、今。三時を過ぎてにわかに忙しくなった店内で、神谷は独楽鼠(こまねずみ)のようにくるくるとよく働いている。


(神谷さん、すごい………)

美寧は自分の初出勤のことを思い返し、その天と地ほどの違いに驚いていた。

神谷はやってきたお客に良く通る声で『いらっしゃいませ』と言い、スムーズに席まで案内する。そしてグラスに入った水を一滴もこぼすことなくお客の前に置き注文を貰うと、戻ってきてカウンターの中のマスターにそれを伝える。
手が空いたら皿洗いも買って出るし、客が帰ったあとの片付けも率先してやる。

レジ操作はまだ教えていないので美寧がするが、それ以外なら自分と同等。もしくはそれ以上にやれるのではないだろうか。

初っ端から、お冷を運んでいたトレーの上で倒してしまった自分とは雲泥の差。
美寧は神谷の仕事ぶりに感心半分、自分の至らなさに反省半分、という複雑な気持ちになっていた。

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