耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「これはどうしたらいいのかな、美寧ちゃん」
買い物帰りの奥様方がさっきまでお喋りに花を咲かせていた四人掛けのテーブルを拭いていると、神谷がやってきて美寧に聞いた。顔を上げると、彼の手には長方形の小さな籠がある。
「えっと、カトラリーバスケットは、カウンターの横にある開きに片づけるんです」
「カウンターの横の……」
呟きながら神谷の視線がその場所を探す。美寧は「こっちです」とその場所を案内した。
カウンターの一番端、店のドアから一番離れた場所に、カウンターへの入り口がある。そのすぐ向かい側の戸棚の中に、カトラリーを入れて出すバスケットを始めとした雑貨が入れてあった。
戸棚を開いて「ここです」と言うと、神谷が「ほんとだ。ありがとう美寧ちゃん」とにっこりと笑った。人好きのするその笑顔につられて、美寧の顔も自然と明るくなる。
初めて大学で会った時もそうだったが、神谷はどこか人の警戒心を解くような雰囲気を持っている。人当たりがいいと言うか善良そうと言うのか。きっと知らない人によく道を訊かれるタイプなのではないだろうか。
「ペーパーナプキンのストックって、この中?」
「あ、それは、一番上の段の……」
神谷に訊かれたものを取ろうと、美寧は棚の一番上に手を伸ばした。
手前側の分は使用中で、奥の方にしかない。奥までなかなか手が届かず、つま先立ちで「うーん」と伸びあがりながら、手探りで探す。
「あ、僕がやるよ」
横に立っていた神谷が、美寧の伸ばした手の先を追い越すように腕を伸ばした時。
カランコロン———入り口のカウベルが鳴った。
開いた戸棚のせいで入り口が見えない。
美寧は体を後ろに逸らせながら、「いらっしゃいませ」と口にしたが、言い終わったところで目を見開いた。
入ってきたお客が映った大きな瞳が、一瞬でキラキラと輝き出す。