耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
ラプワールの裏手にある事務所出入り口から美寧が出ると、表通りのところで待っている怜が目に入る。美寧は小走りに駆け寄った。
「れいちゃん!」
「お疲れさまでした」
「お待たせしちゃってごめんね」
「そんなに待ってなんていませんよ。さ、帰りましょう」
「うん」
怜が差し出した手に、美寧は自分の手を重ねる。美寧は彼の手が大好きだ。
繋いだ手から伝わる温もり。優しく包み込むように握ってくれる大きな手。ほっそりと長い指は触れてみると意外と節くれだっていて、自分の手とは違う感触に毎回胸がトクトクと波打つ。
祖父の皺が沢山入った分厚い手のひらとは違うけれど、優しく美寧を包むようなそんな愛情を感じるのは同じ。それが嬉しくて幸せで、ずっとこうして怜と手を繋いでいたくなる。
それなのになぜか、胸の奥が甘く疼く。
嬉しいのに泣きたくなる。幸せなのに哀しくなる。
いったいこの感情の正体はなんなのだろう———
手を繋ぎ、並んでゆっくりと家路を行く。
夕風に揺れる薄。毎日少しずつ早くなる日暮れ。
西に傾いた太陽が長い影を作り、秋の虫が公園の木立の奥から聞こえてくる。
西日が当たってキラリと光る溜め池の水面が眩しくて、美寧が思わず目を眇めた。
「ミネ———」
ふいに名前を呼ばれて顔を上げると、涼やかな瞳が見下ろしていた。
「なに?れいちゃん」
少しだけ湿った瞳を誤魔化すように微笑んで見せると、怜は何か言いたそうに開きかけた口を閉じる。
「れいちゃん?」
見上げながら小首を傾げる美寧。
すると、怜がポツリと言った。
「……気を付けてくださいね」
「え、何を?……あっ、そっか。うん、分かった」
美寧は頷く。そして言う。
「ラプワールから帰る時は、寄り道せずにちゃんとまっすぐ帰るようにする。気を付けるよ。不審者、怖いもんね。」
神妙な顔でそう言った美寧に、怜が一瞬目を見張る。そして美寧に聞こえないように小さく息を吐き出すと、口を開いた。
「そうですね、十分気を付けてくださいね。不審者にも」
「うん!」
笑顔で頷いた美寧に、怜は真横に伸びた眉を少しだけ下げ微苦笑を浮かべた。