耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
藤波家の前まで帰ってきて、門をくぐると玄関前に立っている人が目に入った。
「あ!」
美寧が上げた声にその人が振り返った。
「あら、ちょうどえぇとこに」
「花江さん!」
藤波家を訪問していたのは、裏の家の三上家の奥さん。二人の帰宅に気付いた彼女は、美寧と怜の方へやってきた。
「おかえりなさい。二人そろぉて、お仕事帰り?」
美寧が「はい、そうなんです」と頷くと、「仲良しさんやねぇ」と花江が目尻に皺を寄せながら微笑んだ。
関西から三上家に嫁入りした花江は、四十年近く経った今もお国言葉で話す。
「こんばんは。御用でしたか?お待たせしてしまって、申し訳ありません」
「気にせんといて、怜君。御用ってほどちゃうの。頂き物のお裾分けに寄っただけやさかい。お留守やったらここに置いて帰るつもりやったし」
そう言って花江は「これなんやけどね」と言って手に持っているスーパーの袋の中身を見せてくれた。
「あっ、銀杏!」
袋の中には、硬い殻に覆われた銀杏がたっぷりと入っていた。
「親戚の家からぎょうさん頂いてしもうて。うちとこはうち以外銀杏苦手で、孫たちも苦おて食べられへんし、良かったら貰うてもらえへんやろか。美寧ちゃん食べはる?」
「はい、大好きです!」
「せやったら良かった。少し多いかもしれへんけど、怜君ならきっと何とかしてくれはるかと思おて」
「ありがとうございます」
銀杏の入った袋を怜に手渡し、帰ろうとした花江さんに「ちょっとだけ待ってていただけますか?」といい、家に足早に入っていた。そしてすぐ紙袋を手に戻ってきた。
「良かったら、これを」
「あら、おっきなお芋はん!」
「こちらも頂き物なのですが、友人が芋掘りに行ったからとくれたのです。少しですが良かったら」
「まあ嬉し!孫たちが来はった時におやつにしたげよかしら」
「一週間前くらいに掘ったばかりのものらしいですので、もう少し置いておいた方が甘くなると思います」
「そやね、さつま芋は掘ってすぐよりも、ちょっとの間熟成した方が甘みが増しはるもんね。おおきに。そないしとくわね」
嬉しそうにそう言った花江は、「ほなまたね」と言って帰っていった。