偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「言っただろ、東峰さんはヒルズのボスだ。
ここを所有している旧財閥家、東峰の次期当主。
将来、政財界を背負って立つお方だ」

そんな人にあんなことを言って、大丈夫なんだろうか。
なにか制裁など受けたりしないんだろうか。
しかし私のそんな心配をよそに、御津川氏はなんでもないように食事を続けていた。

「私ごときのために、東峰さんから反感を買うようなことを言ってよかったんですか」

「別に?
俺は、俺のものを莫迦にする奴を許さない。
たとえそれが、東峰さんだろうがな」

顔を上げた彼と目があった。
まっすぐに私を見つめる、レンズの向こうの瞳には一点の曇りもない。

「李亜は、特に大事な俺のものだ。
李亜のためならなんだってする」

伸びてきた手が、するりと私の頬を撫でて離れた。
眼鏡の奥で目尻が下がり、眩しそうに彼は私を見ている。
その顔に。

……心臓がとくん、と甘く鼓動した。

それは、とくん、とくん、とそのまま、少し速いリズムを刻み続ける。
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