偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
それがなんだか……くすぐったい。
こんなの、鈴木と付き合っていたときには感じなかった。

「ほら、さっさと食ってしまえよ。
俺は明日も、仕事なんだからな」

誤魔化すように笑った、彼の顔は酔ってしまったかのように、ほのかに赤かった。

ほろ酔い気分で、レジデンスに帰る。

「一緒に風呂、入るか」

もう日課のように御津川氏が訊いてきた。

「そう、ですね……。
いい、ですよ」

「え?」

もう、断られるのが前提で寝室を出かけていた彼が足を止め、勢いよく振り返る。

「本当か!?」

一気に距離を詰めた彼から両手を取られ、さすがに酔いが覚めたかのように現実に戻った。

「あー……。
冗談です、冗談」
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