偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
ヘラヘラと笑い、前言撤回を試みる。

「……なんだ。
残念」

それ以上なにも言わず、彼は今度こそ寝室を出ていった。

「うーっ」

ひとりになり、ぽすんとベッドの真ん中にダイブする。
正直に言えば酔った勢いか、御津川氏と一緒にお風呂に入っていいくらいの気持ちにはなっていた。
しかしながら期待を込めた目で見つめられ、なんかこう、……ね。

「愛してる、か」

彼はよく、私にそう言う。
大事にしてくれているのもわかる。

……でも、確実になにかを隠している。

「なにを、隠しているんだろう……」

御津川氏と知り合ってまだ五日。
それでわかり合うなんて無理に決まっている。
これから少しずつ理解していけばいいし、そうなればそのうち、話してくれるかもしれない。
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