偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
適当なカフェに入り、ランチプレートを頼む。

「……?」

妙に視線がつきまとう。
窓際の席だったので、道行く人からも。

……今日、なんか変だったけ?

自分でメイクしたならまだしも、今日は花井さんに頼んだのだ。
おかしいなんてあるはずがない。
原因は思い当たらないし、なんだか気持ち悪くて、食事もそこそこに店を出た。

「……すぅっ」

タクシーを降り、深呼吸する。
同じ家元直轄のお教室でも、いままでは家元の指名を受けた専任講師の指導だった。
私が家元と直接お会いするのなんて、青年部の取り仕切りとして打ち合わせや茶会のときくらい。
稽古場だってさっきの街の一角にあるビルだった。

けれど、今日からの教室は家元が直接指導する。
緊張するな、という方が無理。

「……よしっ」

ぐずぐずと立っていても、不審の目を向けられるだけだ。
思い切って一歩、足を踏み出した。
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