偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「わかりましたよ……」

少し考えて、ゲストルームのベッドから布団を引き剥がしてきてかける。
空調は効いているから、風邪を引くことはないだろう。

「せめて、ジャケットは脱がせるべきだった……」

スーツのまま眠ってしまったから、きっと皺だらけになるだろう。

「でも……」

あのあと、彼が半ばヤケのようにお酒を飲んでいた理由はわかっている。
私がいまだ、彼に対してどこか、他人行儀だからだ。
彼が私を愛してくれているのはもう、理解している。
でも彼は私を〝買った〟のだ。
それに対してわだかまりを持つな、っていう方が無理。

――それでも。

「好き、なんだよね、たぶん」

彼の隣に座り、寝顔を見ているとため息が出た。
キスされても嫌じゃない。
御津川氏が眼鏡の下で目尻を下げ、「李亜」と私の名前を呼んでくれるだけで嬉しい。
確実にこれは――恋、という奴なのだろう。
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