偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「御津川社長と?
咲乃が寿退社したのは聞いていたが、相手が御津川社長なんて話は知らなかったな」

「え、えっと。
はははっ」

思わず、笑って誤魔化した。
だって会社の人間が知っている私の結婚相手はあくまでも、〝鈴木二郎〟だ。

「夏原社長こそ、どうして」

ワインを一口飲み、反対に彼に問う。
彼が、ヒルズの住人なんて話は聞いたことがない。

「ん?
ここは異業種交流にはもってこいの場所だからな。
月に一度くらいの割合で顔を出している。
もっとも、妻を夜、ひとり家に残すのは嫌なんだが」

奥様のことを思い出しているのか僅かに笑い、彼はワインをくいっと飲んだ。

「奥様も一緒に……」

そこまで言って、止まった。
だって、彼の奥様は。

雪花(ゆか)はいま、妊娠しているからな。
こんなところへ連れてきて、無理をさせたくない」
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