偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
ズレてもいない眼鏡を、彼がくいっと上げる。
本当にいい旦那様で羨ましい。
いや、御津川氏が夏原社長に劣るなんて言わないけど。
「それにしても咲乃……いまは、御津川か。
御津川が会社を辞めたのは惜しかったな。
君にはあと二、三年で営業統括部初の女課長、なんて期待していただけに」
「夏原社長……」
ふっ、と淋しそうに笑い、彼がグラスを口に運ぶ。
そんなに彼が私のことを買ってくれていたなんて知らなかった。
知るといよいよ、会社を辞めたのが悔やまれる。
「もしよかったらいつでも戻ってきてくれ。
出産して落ち着いてからでもいい。
待っているから」
名刺入れから名刺を一枚抜き、彼は渡してくれた。
私を見つめる、レンズの向こうの瞳に嘘はない。
もともと、社交辞令なんて失礼な相手にしか使わない人だった。
「夏原社長、私」
いま、就職活動をしているんです。
すぐにでも働けます、なんて言ったらどうするんだろう。
本当にいい旦那様で羨ましい。
いや、御津川氏が夏原社長に劣るなんて言わないけど。
「それにしても咲乃……いまは、御津川か。
御津川が会社を辞めたのは惜しかったな。
君にはあと二、三年で営業統括部初の女課長、なんて期待していただけに」
「夏原社長……」
ふっ、と淋しそうに笑い、彼がグラスを口に運ぶ。
そんなに彼が私のことを買ってくれていたなんて知らなかった。
知るといよいよ、会社を辞めたのが悔やまれる。
「もしよかったらいつでも戻ってきてくれ。
出産して落ち着いてからでもいい。
待っているから」
名刺入れから名刺を一枚抜き、彼は渡してくれた。
私を見つめる、レンズの向こうの瞳に嘘はない。
もともと、社交辞令なんて失礼な相手にしか使わない人だった。
「夏原社長、私」
いま、就職活動をしているんです。
すぐにでも働けます、なんて言ったらどうするんだろう。