偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
食器を下げるだけして、また自分の部屋に戻る。
でも、御津川氏の書斎から灯りが漏れているのに気づいた。

「こんな時間に……?」

時刻はすでに、三時を過ぎている。
寝落ちしているだけならいいが、もし倒れていたら? などと心配になり、ドアに手をかけたら、中から声が聞こえてきた。

……よかった、生きてる。

なんて変な安心の仕方をし、離れようとしたものの。

「純」

聞こえてきた単語で、足が止まる。
いけないことだと思いながらも、そっと聞き耳を立てた。

「……愛してる……フランス……李亜……代わり……」

抑えた声は聞き取りづらく、かろうじてそれだけがわかった。
音を立てないようにその場を離れ、今度こそ自分の部屋に戻る。

「御津川さんは純さんと、フランスに行く気なんだ……」

きっとあれは、「純を愛してる。一緒に、フランスへ行く」だ。
そのあとはまさか、「李亜を代わりにして」?
そんな莫迦な、とは思うけれど、この大量の資料はそれを完全に否定させない。
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