偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「なに、やってるんだろ、私……」

ぐるぐると暗い渦の中へ、足下から引きずり込まれていく。
私はただ単に、彼が自由になるための身代わりだった。
純さんはただの友達なんて嘘。
御津川氏も純さんが好きだから、彼女の手を振り払ったりしなかった。
ありえない、わかっているのに暗闇に捕らわれた私の心は、それを許さない。

「莫迦、みたい……」

それでもパラ、パラ、と書類を捲り続ける。
もう、暗記を続けるのはただの意地になっていた。



――翌朝。

「覚えたか?」

「それは……もちろん」

積み重ねた書類を、彼がぽんぽんと叩く。
覚えた内容をテストでもするのかと次の言葉を待っていたら、インターフォンが鳴った。

「おはようございまーす」

「えっ、花井さん?」
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