偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
ただ呆然と、携帯の画面を見つめていた。
「時間だ」
十時少し前に御津川氏が戻ってきて、会議室へと移動する。
指定された席に座り、配布された資料を読む。
【新役員の推薦について】
その見出しに、まさか本当なんだろうかと絶望しかけた。
さらに、その新役員の名前が、――自分になっているとなると。
しかし、きちんと読めば、今月早々に辞職した取締役の後任で、もうすぐある株主総会での推薦の件だと書いてある。
「……!」
思わず顔を上げると、御津川氏と目があった。
私にだけ見えるように、ニヤリと右の口端を僅かに持ち上げる。
……やられた!
これはたぶん、彼としてはサプライズなのだ。
常識からは外れているし、コンプライアンス的に大丈夫なのか心配になるところではあるけれど。
再就職に反対したのも、私に大量の資料を暗記させたのも、このため。
たぶん、食事やなんか声をかけなかったのは、ただ単に私に気を遣ってだ。
「では、御津川李亜を新取締役に推薦いたします」
「時間だ」
十時少し前に御津川氏が戻ってきて、会議室へと移動する。
指定された席に座り、配布された資料を読む。
【新役員の推薦について】
その見出しに、まさか本当なんだろうかと絶望しかけた。
さらに、その新役員の名前が、――自分になっているとなると。
しかし、きちんと読めば、今月早々に辞職した取締役の後任で、もうすぐある株主総会での推薦の件だと書いてある。
「……!」
思わず顔を上げると、御津川氏と目があった。
私にだけ見えるように、ニヤリと右の口端を僅かに持ち上げる。
……やられた!
これはたぶん、彼としてはサプライズなのだ。
常識からは外れているし、コンプライアンス的に大丈夫なのか心配になるところではあるけれど。
再就職に反対したのも、私に大量の資料を暗記させたのも、このため。
たぶん、食事やなんか声をかけなかったのは、ただ単に私に気を遣ってだ。
「では、御津川李亜を新取締役に推薦いたします」