偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
いまとなっては顔も覚えていないが、同じ香り、同じ台詞を言っていた。

「思い出したのか?」

私の頬をするりと撫でた彼の目が、眼鏡の奥で細くなる。

「なんとなく……」

だから、結婚前の着物姿の私を知っていたのか。

「あの茶会、俺は客として招待されていたが、社員の警備状況も気になるから裏もうろうろしていた。
そこで騒ぎを知り、興味が出て顛末までこっそり見ていた」

まさか、あれを見ていた?
私はバタバタとして気づかなかったけど。

「あの采配の腕に惚れたんだ。
あそこで働いていた李亜は格好よかったから。
あとで、李亜のことを調べた。
付き合っている人間がいると知り、幸せならそれでいいと思っていたが……」

「相手が結婚詐欺師で、さぞかし驚いたでしょうね」

MITSUGAWAは警察とのパイプも太い。
鈴木が逮捕される前にはすでに、情報は入っていたのかもしれない。
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