偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「そうだな。
俺は李亜を悲しませたくなかった。
だから代理なんて思いついたし、同時に李亜をものにできるチャンスだと思ったんだ。
……卑怯だろ?」

レンズの向こうで彼の目が、泣きだしそうに歪む。
思わずその頬に手が触れていた。

「そんなことない、です。
現に私は、助かったから」

「でも俺は、李亜が断れないようにお前を……買った」

彼の瞳には後悔の色しかない。
もしかしてずっと、負い目に感じていたのだろうか。
私のこだわりと一緒で。

「契約を反故にしたいならすればいい。
……これで」

内ポケットから取りだしたなにかを、テーブルの上に滑らせてくる。
確認したそれは、純さんからもらったのと同額の小切手だった。

「でも、これは……」

彼がフランス行きを断った時点で、ただの紙切れになっているはず。
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