偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
正面に座った男が、くつくつとおかしそうに喉の奥を鳴らす。

「だからそれは、詐欺師だった彼の名前で。
本当は御津川(みつがわ)……」

「しっ」

彼の長い人差し指が、私の唇を押さえた。

「それを言ったら代理はここまでにするぞ」

眼鏡の奥から真っ直ぐに私を見つめるその瞳は、少しも笑っていない。

「……はぁっ。
わかりました」

「なら、いい」

満足げに頷き、彼が私から指を離す。
彼の正体については薄々気づいていたが、そんなのいまはどうだっていい。
いやなぜ彼が、こんな見ず知らずの女の、茶番に付き合っているのかは気になるが。
けれどいまの一番の問題は、いかにしてこのピンチをのりきるか、なのだ。

ホテルで披露宴用の衣装に着替える。
また、鈴木二郎(仮)さんは自前の衣装だった。
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