偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「……ありがとう、ございます」

これは結婚式当日に花婿から逃げられた私への、慰めなんだろうか。
このネイビーのドレスは件の彼が、私の顔によく生えると選んでくれたものだ。
いまとなってはどこまで本気だったのか疑わしいが。

「うん。
李亜の凜とした姿によく合っている」

ごく自然に、名前を呼ばれた。
その声はどうしてか、私を騙していた彼に呼ばれるよりもドキドキとさせた。

「それでは、新郎新婦の入場です!」

係の人間の手がカウントを取り、ドアが開かれる。

「笑えよ」

「わかってます」

私の腕を取った肘で小さくつつかれ、笑顔を作る。
中へ足を踏み出せば、拍手で迎えられた。
同僚たちは笑顔だったが、私が結婚を公表したとき影で、きっと金目当てに違いない、なんて噂していたのは知っている。
しかも実際、そうだったなんて知ったら彼女たちは、どんな顔をするのだろう。
気の毒そうな顔をした裏で、それみたことかと笑うんだろうか。
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