偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「え、嫌、嫌ですよ!」

ついそれを、放り投げていた。
自分の耳にすらあけられないのに、人の耳になんて無理。

「昨日、李亜の処女を奪って痛い思いをさせただろ」

「え、は、はい……?」

あれは確かに、この世のものとは思えないほど痛かった。
けれど、それがなにか?

「李亜にだけ痛い思いをさせるのはフェアじゃない。
だから俺は、ピアスをあける」

再び私の手にピアッサーをのせた彼はどこまでも真剣だけど……。
え、まさか、本気ですか?

「そんな必要はないので。
第一、仕事に差し支えませんか?」

アパレル会社の若社長ならまだしも、警備会社なんてお堅い会社の社長がピアスなんて、やはりいい目では見られないだろう。

「俺の見た目が多少変わったくらいで態度を変えるような奴は、こちらからお断りだ。
……ほら、いいからさっさとあけろ」
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