偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
身体を少し離した彼の手が、私の顎にかかる。
上を向かされ、傾きながら近づいてくる彼の顔をぽけっと見ていた。

「……!」

唇が重なり、瞬間、周囲の人間が息を飲むのがわかった。

「……こ、こんなところで……!
みんな見ているのに!」

顔、どころか全身が熱を持ち、顔は上げられない。

「別にいいだろ、夫婦なんだし」

ニヤニヤ笑いながら再びキスしようとした彼を、さすがに抑える。
関係として問題はなくても、恥ずかしすぎる!

東峰(とうみね)様がおみえよ」

「東峰様が……」

御津川氏と微妙な攻防戦を続けていたら、周囲のざわめきと共に一気に空気が変わった。
人並みが割れ、そこを若い男性が歩いてくる。
彼はひとり、黒のハイネックカットソーにブラックパンツとラフな格好だったか、それでもその気品は抑えられない。
目が、彼から離せなかった。
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