オフィスラブはじまってました
 ひいっ。
 その綺麗な顔でまじまじと私の顔など見ないでくださいっ。

 しかも、ちょっとこの前をさりげなく通って、ぐるっと回って帰るだけのつもりだったから、すっぴんっ、とひなとは違う意味で怯える。

「関係ない話してるときも思い出せたりするんだよね。
 お腹空いてきたけど、そういえば、カップ麺の替え玉ってたまに欲しくならない?」
というようなしょうもない話を延々と聞かされていたのだが。

 一時間以上、話に付き合った気がするのに、結局、何処の誰なのかもわからず、こっちも名乗っていなかったのが怖い、と後からひなとは思った。

 いや、こういう妙な人に名乗らなくてもいいのだが……と思った翌朝、アパートの廊下で柚月に会ったので、その話をしてみた。

 すると、柚月は、
「ひとりで夜出ていくな。
 そういうときは俺を呼べ」
とちょっと怒ったように言ってくる。

 心配してくれたようだった。

 ひなとは、
 ……なんですか、それ。
 どきりとしてしまうではないですか、と思っていた。
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