オフィスラブはじまってました
「でも、キャンプ道具っていうから、火打ち石で火を起こして、炭に火をつけるのかと思ってました」
と言って、

「……何処から始めるつもりだ」
と言われる。

「まあ、そういうのが楽しいのかもしれないが。
 此処、アパートだしな」

 そうでしたね……と周囲の景色を見回したあとで、ふたたび、シングルバーナーの上で煮えている玉ねぎを覗き込む。

 薄い飴色のスープは、コンソメと隠し味的にちょっぴり醤油だけ。

 今の時期の玉ねぎはぷるぷるした食感で、甘い。

 素材の味を楽しもうということになったからだ。

「いやー、それにしても、柚月さんちにカセットボンベがあってよかったです。
 なにからなにまですみません」
とひなとが礼を言うと、

「冬に鍋するのに使うからな。
 ……それより、コンソメがないのにビックリしたが」
と柚月は言う。
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