オフィスラブはじまってました
 彼女は口を開けて、なにか言いかけたが、言葉は出ず。

 上を向いて、少し考えたあとで、

「……どういうのかしらね。
 改めて訊かれるとよくわからないわね」
と言い出した。

 あ、と思い出して、ひなとは手を叩く。

「そういえば、近世の授業で、江戸文学やったとき、再試は実技だったんですよ」

「江戸文学の実技ってなによ」

「色目を使ってみる、とか、柳腰でしゃなりしゃなりと歩いてみる、とかだったらしいです」

 筆記だと点数とれない人への救済措置のようだった。

「へえ。
 役に立つ授業ね。

 で、どうやって使うのよ、色目」
と彼女は身を乗り出す。

「いや~、それが私、幸いにも再試受けなくてすんだので。
 あっ、でも、近いうちにまた実家に帰るので、近世のノート取ってきますよ」

 なにか書いてるかもしれないですしね、とひなとは言った。
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