オフィスラブはじまってました




「じゃあ、戸締りちゃんとするんだよ」
と言って、澄子が帰っていく音がした。

「はいっ。
 お世話になりましたっ」
とハムスターが礼を言っている。

 廊下に出ているようだ。

 気になる……と柚月は思っていた。

 隣に住んでいる女性がどんな人が気になる、というのではない。

 このままだと、頭の中で彼女はジャンガリアンハムスターのままなので、さっきから、ハムスターが、

「通帳焼けちゃってどうしようかと思ってたんですけど。
 キャッシュカード持ってました」
と苦笑いし、

「月曜にでも銀行に行って、通帳作ってもらおうと思います」
と言っていた。

 柚月の頭の中では、何故かハムスターがキャッシュカードを手に二足歩行で銀行に向かっている。

 くだらない妄想が続いて、佳境に入っているはずの本に集中できないので、チラとでも彼女の顔を見、人間だと認識しておこうと思ったのだ。
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