オフィスラブはじまってました
 思わず、そちらを見ていると、
「なんだ、やりたいのか」
と訊かれる。

「あっ、いえ。
 私、あのガーッと混ぜるのが苦手で」
と言いながら、重そうな中華鍋を見る。

 よく手入れされている鉄の中華鍋だ。

「そうか。
 じゃあ、一緒にやってみるか」
と言われ、

「え?
 いいんですか?」
とうっかり言ってしまったが。

 根が体育会系なのか、なにかのスイッチが入ってしまったらしい柚月は、本気でひなとに中華鍋の振り方を仕込もうとする。

「腕力がないな。
 もっと鍛えろっ」

「はいっ」

「明日から一緒に筋トレでもするか」

「はいっ」

 反射で、はいと言ってしまったが、筋トレなど今までの人生には無縁のものだった。
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