幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~

 ――カフェに入ると,あたしと大智は二人掛けのテーブルに向かい合わせで座った。

 まだ四月で少し肌寒いので,オーダーしたのは二人ともホット。あたしはラテで,彼はブラックだ。

「――里桜,元気だった?」

「うん,まあね」

「結婚したんだって? 風のウワサで聞いた」

「……うん」

 大智に結婚のことを言われ,あたしは何だか後ろめたい気持ちになり,左手の薬指を隠した。

 この指輪は,いわば〝幸せの象徴〟のはず。でも,あたしはちっとも幸せじゃない。

「そのわりには,あんまり幸せそうじゃねえな」

 そんなあたしの心の内を見()かされたように,絶妙(ぜつみょう)のタイミングで大智にそう言われた。

「うん……。実は,この結婚は不可抗力だったの。色々と事情があって……」

 あたしは彼に,洗いざらい話した。――父が抱えた一億円の借金のこと,その肩代わりを夫である正樹さんのお義父さまがして下さったこと,その条件としてあたしが藤木家に(とつ)いだことを……。
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